慣性モーメントとは
慣性モーメント は、物体の「回転のしにくさ」を表す量で、単位は kg·m² です。物体を小さな質点に分けたとき、各質点の質量 と回転軸からの距離 の2乗の積を合計したものです。
距離の2乗で効くため、同じ質量でも回転軸から離れた位置にあるほど、慣性モーメントは大きくなります。モータで負荷を加速するときのトルクは なので、慣性モーメントはモータ選定の出発点になります。
形状ごとの慣性モーメントの式
このツールで扱う形状の、重心を通り回転軸と平行な軸まわりの慣性モーメントは次のとおりです。同じ円柱でも、回転軸に対する向きで式が変わります。回転軸が鉛直なら、「平行」は回転テーブルに円板を寝かせて置いた状態、「直交」は丸棒やローラを寝かせて置いた状態です。
| 形状 | 慣性モーメント |
|---|---|
| 円柱(円柱の軸が回転軸と平行) | |
| 円柱(円柱の軸が回転軸と直交) | |
| 円筒(円筒の軸が回転軸と平行) | |
| 円筒(円筒の軸が回転軸と直交) | |
| 直方体(回転軸と平行な辺を高さ H とする) | |
| 質点 |
: 質量 [kg]、: 半径(円筒は内半径)[m]、: 外半径 [m]、: 幅 [m]、: 長さ [m]。回転軸と平行な寸法(軸が回転軸と平行な円柱の長さ、直方体の高さ )は、慣性モーメントに影響しません。軸が回転軸と直交する円柱・円筒では、長さ が効きます。
半径と直径の取り違えに注意してください。直径 で書くと、円柱は です。
平行軸の定理(回転軸が重心を通らない場合)
回転軸が部品の重心を通らない場合は、平行軸の定理を使います。重心まわりの慣性モーメントを 、重心から回転軸までの距離を とすると、
です。回転テーブルの端に載せたワークや、アームの先端の部品は、この の項が大きくなりがちです。たとえば直方体を長さ方向の端で回すと となり、細長い負荷では中心で回す場合の約4倍になります(回転軸が高さ方向の場合)。
複数の部品は足し合わせられる
同じ回転軸まわりの慣性モーメントは、部品ごとに求めて足し合わせられます。
テーブル・ワーク・治具・カップリングなどを部品に分けて入力すると、どの部品が全体の慣性モーメントに大きく効いているかを「割合」で確認できます。割合の大きい部品を軽くするか、回転軸に近づけると、必要トルクを効率よく下げられます。
GD² と kg·cm² の換算
古いカタログや一般産業用モータの資料では、慣性モーメントの代わりに GD²(はずみ車効果)が使われることがあります。GD² [kgf·m²] と慣性モーメント [kg·m²] の関係は次のとおりです。
サーボモータのカタログでは、ロータ慣性モーメントが「×10⁻⁴ kg·m²」で書かれていることが多く、これは kg·cm² と同じ値です(1 kg·m² = 10⁴ kg·cm²)。