減速機でトルクと回転数はどう変わるか
減速比 の減速機を使うと、負荷側の回転数はモータの になり、トルクは理想的には 倍(効率 を含めると 倍)になります。逆に、負荷を回すのにモータが減速機に渡す必要のある回転数とトルクは、次のとおりです。
は減速機の効率です。歯車の摩擦などで失われる分だけ、モータは理論値より大きなトルクを出す必要があります。効率は減速機の種類・減速比・負荷率で変わるため、使う減速機のカタログの値を入れてください。
たとえば負荷側で 60 rpm・10 N·m が必要なとき、減速比 50・効率 90% の減速機を使うと、モータは 3000 rpm・約 0.222 N·m を減速機に渡せばよいことになります。
この には、モータ自身(ロータ)を加速するトルクは入っていません。一定の速さで回っているときは がそのままモータの必要トルクですが、加速しているときは、ロータの慣性モーメント とモータ軸の角加速度 による分が上乗せになります。
上の例で、モータが 0.1 秒で 3000 rpm まで加速する()とき、ロータ慣性 のモータでは となり、必要トルクは約 0.43 N·m と、 のほぼ2倍になります。減速比が大きいほど負荷側の値はモータ軸で小さくなる一方、ロータの分は小さくならないため、この差が目立ちます。
慣性モーメントは減速比の2乗で小さくなる
負荷の慣性モーメント をモータ軸から見た値(モータ軸換算)は、減速比の2乗で小さくなります。
これは、回転の運動エネルギーが同じになることから導けます。負荷の角速度を 、モータの角速度を とすると、
減速比 50 なら、負荷の慣性モーメントはモータ軸から見て 1/2500 になります。大きな負荷でも、減速機を使うと小さなモータで加速できるのはこのためです。
イナーシャ比とは
イナーシャ比は、モータ軸換算の負荷慣性が、モータのロータ慣性 の何倍かを表す値です。
イナーシャ比が大きいほど、モータに対して負荷が「重すぎる」状態になり、加減速で振動しやすく、位置決めに時間がかかるなど、制御が難しくなります。許容できるイナーシャ比は、モータの種類(サーボモータ・ステッピングモータなど)やメーカー・機種によって異なるため、モータのカタログの値を確認してください。
イナーシャ比を下げるには、減速比を大きくする、ロータ慣性の大きいモータを選ぶ、負荷を軽くする(回転軸から遠い部分の質量を減らす)、といった方法があります。
減速比を決めるときに確認すること
減速比を大きくすると、モータ軸トルクとイナーシャ比は小さくなりますが、モータ回転数は大きくなります。減速比を決めるときは、次の点を合わせて確認します。
- モータ回転数 が、モータの最高回転数と、減速機の許容入力回転数を超えないか
- モータ軸トルク (加速時はロータの加速トルク を足した値)が、モータのピークトルク(加速時)・定格トルク(連続運転時)に収まるか
- 負荷側のトルク が、減速機の許容出力トルクに収まるか
- イナーシャ比が、モータの許容値に収まるか
連続運転時の確認には、運転パターン全体の実効トルク(RMS トルク)を使います。負荷側の必要トルクは「モータ必要トルク計算」、実効トルクは「RMS トルク計算」で求められます。